バス広告にはデザインの審査があります。
一口に審査と言っても、具体的にはどんな部分が見られているのか、そもそもなぜ審査が必要なのか?
今回は、当社で交通広告のデザインを専門にしているデザイナーにインタビューを行いました!
こんにちは!よろしくお願いします。
まず、どうしてバス広告にはデザイン審査があるのでしょうか?
バス広告は公共交通機関に掲示するものなので、広告の内容やデザインが公共の掲示物としてふさわしいかを審査する必要があるからです。
バス広告のデザイン審査とは?
審査では、社会的な価値観とか通念と離れていないか、モラル的に問題ないかなどを確認しています。
また、広告を掲示することを広告業界では特に「掲出(けいしゅつ)」と言うのですが、バス広告は車両の中・外に掲出しますので、交通安全上問題がないかも重要です。
あとは、自治体によっては街の景観を阻害していないかといった景観性、医療など特定の業種には広告全般を出す際に守るべきガイドラインがありますので、そのあたりも含めて審査の基準となっています。
なるほど。たくさんの人が見る広告だからこその配慮が必要なんですね。
そうですね。
なので、たとえば広告に載せる価格やサービス内容についての情報も正確でないといけません。特定の属性に当てはまる人や誰かを傷つけたり攻撃するような内容であってもいけません。
公共のものだからこそ、見る人にとって信用できる広告にする必要があるわけですね。
バスだけじゃなくて、電車や駅の広告も同じ理由で審査があります。
デザイナーとしても、見た人にとってプラスになる広告を制作したいと思っています。
審査の種類
具体的にはどのような審査が行われているんですか?
広告主の業種や掲出先のメディアの種類によって、大きく3種類あります。
①通常のデザイン審査
②医療広告審査
③ラッピングバス審査
通常のデザイン審査
1つめは、通常のデザイン審査ですね。すべてのバス広告が審査対象です。
審査を行うのは、バス会社や鉄道会社、交通局など。デザイナー側で広告のデザインを制作し、広告主にOKをいただいたら審査にかけていきます。
各バス会社・鉄道会社ごとに広告用のガイドラインがあり、審査の基準も異なりますが、主に自社の交通機関に設置する広告として問題がないか、信頼できる内容かどうかを見ていますね。
≪審査基準の例≫
- 公序良俗に反しない・児童や青少年保護の観点から適切であること
- 各種法律・法令に照らし合わせて適切か
- 特定の政治や宗教の宣伝が主な目的になっていないか
- 人権侵害や名誉棄損になっていないか、社会倫理から乖離していないか
- 各社の交通事業の妨げになっていないか
医療広告審査
2つめは、医療広告審査です。
クリニックなどの医療機関が広告を出す場合は、医療広告ガイドラインに沿った広告を制作します。
これはバス広告に限らず、ホームページやテレビ・新聞などでもいえることですね。
ガイドラインに沿わずに規制事項や禁止事項に違反した広告を出してしまうと、罰則が科されることもあるので、細心の注意が必要です。
保健所の確認が必要な場合もあり、その際は確認期間ぶんのスケジュールを調整します。
≪審査基準の例≫
- 診療科名や資格名などは厚労省が認めたものに限り表記OK
- あいまいな金額表記をしない
- 「広告可能事項」以外の内容が入っていないか
- 虚偽・誇大・比較優良広告などは禁止
- 患者の主観にもとづく体験談やビフォーアフターの写真など、治療の結果が確定しているように誤認させる内容は禁止
- 医療広告ガイドライン以外の景品表示法や薬機法に違反していないか
罰則もある厳しいガイドラインですが、地元地域での知名度アップの手段としてバス広告はとても有効なので、多くの医療機関が利用しています。
ちなみに当社では、2022年度に30件ほどの医療広告を作成しました。
(アナウンス広告を除く)
ラッピングバスの審査
3つめはラッピングバスの審査です。
この審査は、ラッピングバス広告をお申し込みの場合のみ追加されます。
ラッピングバスは国土交通省で定められた「屋外広告物」に当てはまるので、追加の審査をし、「屋外広告物許可申請」を行います。
この審査では、公共の場所に掲出する広告として適切かどうかを見ています。
たとえば、真っ赤なラッピングバスが走っていたら、パッと見では消防車と見間違う可能性がありますよね。
文字がたくさんあるデザインにしてしまうと、広告を見た運転手さんが文字を読むのに気を取られて対向車や歩行者に気づかなかったり、一瞬の判断の遅れで事故につながってしまうかもしれません。
また、多くの人が見るものなので、特定の人などが不快になったり誤解したりする表現も避けたいところです。
ラッピングバスでは特に交通上の安全性や公共性を求めた基準で審査されています。
ラッピングバスの審査を行うタイミングは、通常の審査を受けたあと。都道府県の屋外広告協会や交通局などの審査機関が行います。
その後、自治体に「屋外広告物許可申請」を出し、掲出という流れです。
バスラッピングの審査にはたくさんの機関がかかわるため、承認後に広告主がデザインを変更することはできません。
デザインの確認時に会社名・電話番号・営業時間など、間違いがないかよくよく確認するようにしてくださいね。
ありがとうございます。
いろいろな審査があるんですね!基準も違っていて驚きました。
そうですね。正直かなり複雑です。
複雑ですけど、道路での安全性と、広告の効果を同時に確保するためにはとても大事な作業なんです。
ですので、間違いのないように一つひとつ確認しながらデザインや手続きを進めています。
でも、審査や手続き自体は代理店側で行うので安心してもらって大丈夫です。
それに、審査があるからこそのメリットもありますよ!
メリットですか。それはなんでしょう?
ズバリ、信頼性が上がるということです。
審査があることのメリット
昨今はステルスマーケティングの規制が始まったり、広告が消費者に対して誠実な姿勢を見せられるかが以前よりも重要になってきました。
基準に沿ったデザインを作成し、審査を行うバス広告は、誤解を招く表現や大げさな誇張がないので、広告を見る人は安心して情報を得ることができます。
また、第三者の目が入ることによって炎上のリスクも減らすことができます。
企画してデザインして、お金をかけていざ掲出!となった広告が、ネットで炎上・批判されて取り下げ…なんてことが結構あります。
そのような広告は、伝えたいメッセージや思いが先行しすぎて、見る人がどう感じるかを考えきれなかったことが原因の場合もあります。
バス広告の審査では、広告主とはちがう視点からのチェックが入るので、炎上のリスクが軽減されるんです。
そういった意味では、バス広告は見る人にとっても広告主にとっても、堅実な広告といえるかもしれませんね。
さいごに
さいごに、バス広告を考えている方へのメッセージをお願いします!
バス広告の審査、と聞くと身構えてしまうこともあるかもしれません。
たまに、どうしてもこれは載せられない…というケースも確かにあります。
でも、基準やガイドラインの中でも、皆さん自由に思い思いの広告を掲出していらっしゃいます。
まずは自由に思いのたけやご要望、イメージなんかを聞かせていただければ嬉しいです。
個性を最大限にいかした広告を一緒に作っていければいいなと思っています!
とても勉強になりました。ありがとうございました!